医療関係者

②研修医のタイプ

研修医のタイプ

院長 是永大輔


 私の経験を振り返ると、研修医には表のようなタイプがあります。A君は知識と技術、実行力と判断力が備わっていて、人格的にも優秀なタイプ、B君・C君はこれらの要件が整っているわけではないが、人格・素養の面で問題ないタイプ、D君は知識・技術に関して合格点が与えられるが、何事にも消極的で人格にも問題があり、周囲から信頼されないタイプ、E君は知識・技術は不十分だが、何でも積極的で、周りとのコミュニケーションがとれないタイプ、F君は知識・技術や実行力・判断力の点では劣るが、“人柄は良い”と衆目の一致するタイプ、G君は知識・技術や実行力・判断力ばかりでなく、医師としての人格・素養に欠け、臨床医には不向きなタイプです。
 実際にはA君のように理想的な研修医はまれで、B君・C君のように知識・技術、実行力・判断力のいずれかが欠けている場合が殆どです。しかし、医療に対する情熱と謙虚な姿勢があれば、これらは自然と身に付くものなので心配ありません。指導医は、できるだけ早い時期に努力すべきポイントを教えることが必要です。
 一方、D君やE君のように医師としての人格や素養に疑問符がつく場合は要注意です。「分かっていてできればやるのが当然」と思うのはわれわれの錯覚であり、患者にとって必要なことは分かっているけれど、体が動かない場合は少なくありません。技術や実行力ばかりが先行するタイプもまた危険です。このような研修医に対しては、知識や技術だけでなく、まずは患者に対する正しい対応を修得させ、必要なことを着実に実践するという姿勢を伝授することが重要となります。ときにはF君のように “何も分からず、何もできず、何もしようとしない”という鈍才もいますが、自尊心は人一倍強いので、周囲からの手応えを得ると、それを梃子として変身することもあります。相手を自分の懐に入れて、主体性を重んじながら、彼等の自負心を責任感へと転化させていくのも我々の役割ではないでしょうか?
 最近、旧日本海軍連合艦隊司令長官 山本五十六元帥の格言に教育者の風格を感じます。「言うは易く、行うは難し」、私の永遠のテーマとなっています。

  • ● やって見せて、言って聞かせて、やらせて見て、ほめてやらねば、人は動かず
  • ● 話し合い、耳を傾け、承認し、任せてやらねば、人は育たず
  • ● やっている、姿を感謝で見守って、信頼せねば、人は実らず


研修医のタイプとその評価

研修医 A君 B君 C君 D君 E君 F君 G君
基本的知識・技術 × × × ×
実行力
判断力
× × × ×
人格・素養 × × ×
評価 優秀
(理想的)
普通
(要努力)
普通
(要努力)
やや劣る
(要注意)
やや劣る
(要注意)
劣る
(要指導)
不良
(不適正)
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