中津市立中津市民病院医療関係者へ初期臨床研修⑧研修医のリサーチマインドを育むために

医療関係者

⑧研修医のリサーチマインドを育むために

研修医のリサーチマインド

院長 是永大輔


 2002年4月、文科省は詰め込みによるおちこぼれや非行の問題を反省し、学習内容を減らして個性とゆとりを重視する教育路線を敷きました。方策は学習内容の3割削減、学校週5日制、総合的学習時間の新設などでしたが、5年後に基礎学力低下が証明され、教育再生への路線変更を余儀なくされました。私の末娘はゆとり教育の申し子であったため、教える知識の量を減らせば自主性や創造性が身に付くという考えは妄想に過ぎないことを実感しました。ゆとり教育が “国家百年の大計を誤る失政"であったと思うのは私だけではないでしょう。 厚労省主導の臨床研修制度が導入されて5年目。この制度には基本的診療の修得、進路選択の自由、一般病院の活性化など多くの利点がありますが、将来、基礎医学を志す若者(Scientific-minded specialist)が減り、根無し草のような医師(Floating doctor)が多くなることが懸念されているのも事実です。研修医の多くは、“習うことが当然"の土壌で育っており、将来、独りよがりの医療に陥らないためにも、自己の診療の位置づけを検証できるscientific mindを育むことが大切です。我々はゆとり教育の教訓から目をそらさず、しっかりとしたデザインをもって研修医教育に取り組まなくてはなりません。

 当院は基本的診療能力の修得という研修制度の理念を踏まえたうえで、自分で考えることのできる医師の育成を心がけ、リサーチマインドを後押しする卒後研修を試行しています。具体的には、忙しい研修生活のなかで学会発表を奨励し、臨床研究の意義と喜びを体験してもらっています。また、2年次に夏季休暇を利用してオーストラリアでの海外研修も経験してもらっています。臨床研修医の存在によって病院は確かに活性化されます。当院の研修医諸君には、「視野が開けた」でもいいし、「自信がついた」でもいい、「勉強に興味がわいた」でもいい、何かひとつでもその後の社会で生きる糧になるものを身につけてもらいたい。中津市民病院で成長した証を自分自身で見つけてもらえれば・・・と願っています。

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