病院紹介

院長あいさつ

院長 是永 大輔

院長 是永 大輔

平成28年4月1日

 平成28年4月に中津市立中津市民病院院長として当地に赴任して一年余りが経過しました。中津市民病院は大分県北から福岡県東部(京築地域)に広がる24万人医療圏において唯一の公的基幹病院であり、大分県の地域がん診療連携拠点病院・災害拠点病院であるとともに中津市立小児救急センターや地域周産期母子医療センターが併設されています。大分県各医療圏別の人口をみますと、北部が16.6万人、東部が21.7万人、中部が50.7万人ですが、別府(東部地区)や大分(中部地区)には大病院が密集しています。単純に200床以上の急性期病院1施設あたりの患者密度を比較しますと、北部医療圏の16.6万に対して、他医療圏は7万~9万にすぎず、文字通り当院は地域住民にとって最後の砦となっています。歴代院長である松股孝先生、増田英隆先生、池田正仁先生、横田昌樹先生のご尽力により、病院経営は順調で移譲後の経常黒字を継続しています。この実績を基盤として、小児・周産期の政策医療はもちろんのこと、癌や循環器などの高度医療の推進、緩和医療の充実、患者ファーストの実践を行い、官兵衛の造った豊前中津を地域医療モデルにしていこうと考えています。

 平成28年度の取り組みをみますと、まず、地域医療において救急の充実は不可欠であるため、救急搬送の受け入れをスムーズにするために救急ホットライン体制を構築しました。これによって搬送中に車内から救急救命士が医師に直接電話連絡して情報提供できるようになり、即座に病院で対応する体制が整いました。その結果、救急搬送数や新規患者数は大幅に増加し、平成28年度の患者紹介率は64.7%から75.1%に向上しました。平均在院日数は10.7日、病床利用率は約87.5%(稼働率95.6%)、毎日、ベッドの確保が大変な状況が続いており、昨年度も経常黒字(収支比率101.6%)を達成することができました。政策医療の柱である小児救急については、平成24年の小児救急センター開設以来、フリーアクセスの24時間365日小児救急医療体制を維持してきましたが、全国的に小児科医師の減少が著しいなかで多くの課題を抱えたままの運営でした。この不安定な体制を改善するために昨年一年間にわたって大分県をはじめ中津医師会や近隣自治体などの関係機関と協議を重ねてまいりました。その結果、平成29年4月より、従来の中津市民病院小児救急センターを中津市立小児救急センターに改編し、再出発するに至りました。中津市立小児救急センターが夜間・休日の一次医療(初期救急)を担当し、中津市民病院がその後方の二次医療を受け持つという機能分担システムの導入により、北部医療圏に永続的な小児救急医療体制を構築することができました。

 高度医療については、平成28年秋に心臓外科の充実と歯科・口腔外科の開設を行いました。従来から手術を必要とする心臓病や口腔癌・舌癌などの患者さんは大分市や北九州などの病院へ行かざるを得ず、大変不便な思いをさせていましたが、昨年10月に北部医療圏で初めて第1例目の開心術、そして11月には舌癌の手術が成功し、病院のステータスは確実に高まりました。一方、医療計画に基づく北部医療圏の入院医療完結率をみますと、救急医療は90%ですが、胃癌や大腸癌が80%、肝臓癌や乳癌では70%台、肺癌では60%台に留まっており、癌患者については大分、北九州、福岡への流出が少なくないのが現状です。当院は大分県地域がん診療連携拠点病院であり、これらの領域についても地域完結型医療をさらに推進していきたいと考えています。

 現在、増築を計画中であり、二年後完成の新病棟には、個室病棟、緩和センター、災害時避難スペースと音響設備のある講堂などを予定しています。当院で平成28年度に何らかの癌で入院した患者さんは1,828人、そのうち死亡された方は年間175人であり、平均在院日数は29.4日でした。このような癌患者さんができるだけ地元で質の高い生活を送れるように緩和医療を充実させて、地域のニーズに応えたいと考えています。着任以来、職員には、「患者ファーストが大切、患者さんあっての病院、患者さんあっての医療従事者であることを忘れないように!」と叱咤激励しています。昨年4月に開設した「院長の無料健康相談室」や12月に開催した「市民公開講座~地域の患者さんにより良い医療を提供するために」は好評であり、今後も地域の皆様方のご理解をいただくためにこのような企画を継続していくつもりです。

 私は院長就任時に職員と五つの約束を交わしました(図)。そして、「中津市民病院は中津市民の財産です。県北の雄に満足することなく、県下で最も光り輝いて、高い評価を受ける病院になりましょう。」とメッセージを送りました。今後もホスピタリテイ―溢れた病院造りを目指して、安心・安全な医療を提供していくつもりですので、御指導、ご鞭撻を賜りますようお願い申し上げます。

平成29年4月1日