病院紹介

院長あいさつ

 平成30年4月11日午前3時40分ごろ、大分県中津市耶馬溪町金吉で起こった大規模な土砂崩れは男女6人の死者をだす被害をもたらしました。中津市は大分県を通じて自衛隊に災害派遣を要請し、警察や消防とともに救助活動を進め、災害拠点病院の当院からもDMAT6名が、現地で当日の救護活動に参加しました。災害医療は医療従事者としての使命感とボランティア精神に基づくものですが、二次災害の恐怖を感じながらの救護活動であり、肉体的にも精神的にも想像以上に過酷なものにちがいありません。災害派遣活動に従事してくれた職員の無事の貴院に安堵し、彼等の真摯な行動に心から敬意を捧げます。

 今年度は中津市民病院に赴任して3年目を迎えます。平成28年着任早々に襲来した24万人医療圏(大分県北・福岡県京築地域)の小児医療崩壊の危機については、大分県をはじめ中津医師会や近隣自治体などの関係機関と協議を重ね、平成29年4月中津市立小児救急センター設立による機能分担システムの導入によって何とか回避することができました。幸いなことに、小児・周産期医療は以前にも増して安定化し、心臓血管外科や歯科口腔外科の新しい診療科も地域に定着しましたので、来春の新病棟完成と緩和ケアセンター開設に向けて準備を進めているところです。

 さて、社会の高齢化にともない救急患者は増加の一途をたどり、夜間・休日の救急当直や重症患者に対応する医師の疲弊防止が全国的な問題となっています。当院は平成29年6月より県内で初めて夜勤代休制度(2交代制)を導入して医師の労働時間適正化に対応してきましたが、医師会の高齢化、勤務医過重労働対策、新専門医制度による医師派遣の減少、超高齢者の老衰死問題などの黒船襲来が重なり、今後、中津の救急医療体制が維持できなくなることが懸念されます。小児救急問題は回避できたものの、成人に同様の難局が訪れないという保証はありません。これらに諸問題に対応するために、医師会・病院・行政が三位一体となって救急医療の抜本的改革について協議を重ねた結果、平成30年6月から中津市の成人救急医療体制が改編することになりました。すなわち、夜間・休日の急病患者については、日曜・休日当番医院や救急告示病院が一次救急を担当し、中津市民病院はその後方で救急搬送や重症患者の対応に専念する「機能分担システム」の導入が成人医療にも実現する運びとなりました。永続的な救急医療体制構築のため。行政と医師会が連携して救急医療の窮状に関心をもち、地域全体で救急医療を守るという共通認識に立ったことは大きな福音であり、この新たな制度改革は、医師の少ない大分県北部・福岡県京築地域の医療圏で安定的な運営をもたらすものと期待されます。

 政府が推奨する働き方改革のなかで「地域医療を守るため勤務医の過重労働はやむを得ない」という論理はもはや成り立たず、人材を確保しにくい地域医療で「市民の安全と安心をどのように担保していくか?」が私に課せられて使命と考えています。今後とも市民に安心・安全の医療の提供するために微力を尽くす所存でありますので、ご指導とご鞭撻を賜りますようお願い申し上げます。

平成30年6月