脳神経外科の診療内容
診療内容
脳血管障害
脳卒中とは脳の血管が詰まることによる脳梗塞、脳の細い血管が破れることによる脳出血、脳動脈瘤が破裂して生じるくも膜下出血の総称です。これら脳卒中は日本人の死因の第4位、要介護原因の第一位を占める重要な疾患です。当院では脳卒中の救急医療と発症予防の両面から脳卒中診療を行っています。
一刻を争う脳梗塞治療
従来、脳梗塞の治療は安静にして点滴をするといった画一的なものでしたが、血栓溶解薬や血栓回収治療(カテーテル治療)の認可・普及により、発症早期であれば積極的に治療介入を行う道が開けてきました。当院でも発症4.5時間以内に使用できるアルテプラーゼ(t-PA)や、発症8時間以内に物理的に血栓を吸引除去する血管内治療を導入しています。
ペナンブラの例 | |
脳梗塞予防の外科治療
脳梗塞予防のためには生活習慣の是正と適切な薬物療法が重要ですが、内頚動脈狭窄症や脳主幹動脈閉塞のある患者さんには、脳梗塞予防のための外科治療を行っています。下記のような治療がありますが、患者さん個々の病状を考慮して適切な方法を選択します。
頚動脈内膜剥離術(CEA)
頚動脈を切開して動脈硬化のプラークを取り除く手術です。内頚動脈の高度狭窄(写真左)を認めますが、術後の血管造影検査(写真右)では血管の拡張が得られています。 |
外頚動脈-内頚動脈バイパス術(EC-ICバイパス術)
頭皮を栄養する動脈を脳表の血管に直接吻合することで脳血流を改善させる手術です。浅側頭動脈を脳表の血管に吻合します(写真左)。ICG蛍光血管造影機能付きの顕微鏡で観察すると、バイパスの血流を確認できます(写真右)。術後の脳血管造影検査では外頚動脈系から大脳半球へ血流が供給されています(写真下)。 |
脳動脈瘤
脳に血流を送る脳動脈の分岐部にできた膨らみを脳動脈瘤といいます。これが破裂して出血したものが「くも膜下出血」です。この動脈瘤の治療には開頭クリッピング術と血管内治療があります。当院ではクリッピング術を中心に行いつつ、症例に応じて血管内治療を適応しています。
脳腫瘍
頭蓋骨の中にできる腫瘍を総称して脳腫瘍と呼びますが、実際には非常に多くの種類の脳腫瘍があります。そのうち頻度の高いものは髄膜腫、グリオーマ、下垂体腺腫、聴神経腫瘍、転移性脳腫瘍などです。脳腫瘍の種類や部位、患者さんの年齢などの条件に応じて、手術や放射線治療、化学療法など最善の治療方針を検討します。
頭部外傷
交通事故やスポーツでの受傷、高齢者の転倒など頭部外傷も脳神経外科の重要な診療分野です。軽症の場合には経過観察ですむことが多いですが、脳挫傷や急性硬膜下血腫などの重症外傷では緊急手術や厳重なICU管理が必要となります。また頭部外傷後3週間から1ヶ月以上経過して、頭蓋骨の内側に血液が溜まってくることがあります(慢性硬膜下血腫)。症状としては頭痛や運動麻痺、歩行困難、認知症などをきたします。高齢の方に多い病気ですが、比較的簡単な手術でよく改善(治癒率は90%程度)します。
慢性硬膜下血腫
右のCT画像のように脳と頭蓋骨の隙間(硬膜下腔)に液体状の血液が貯留して脳を圧迫します。治療は局所麻酔で、頭部に1円玉くらいの穴を開けて、内部の血腫を除去し、ドレーンと呼ばれる細い管をおよそ一晩留置します。 |
水頭症
治療可能な認知症として注目を集めているのが正常圧水頭症と言われる病気です。高齢者に多く、高齢化に伴って増加しています。典型的な症状は歩行障害・尿失禁・認知症の3症状で、これらの一部あるいはすべての症状を生じます。正常圧水頭症では脳脊髄液の吸収が障害されており、シャント手術(図を参照)によって脳脊髄液を腹腔(お腹の中)に流すことで症状が改善します。正常圧水頭症はパーキンソン病やアルツハイマー病などと似た症状を呈するため、手術が有効かどうか、きちんと検査を行い術前に見極めることが重要です。
脳室が拡大(赤矢印)している割に頭頂部の脳溝がぎっしり詰まっている。一方シルビウス裂は開いている(黒矢印)。 |
診療機器
手術用顕微鏡:Carl Zeiss PENTERO900ナビゲーションシステム:Brain Lab
神経モニタリング装置:日本光電Neuromaster
神経内視鏡:KARL STORZ