医療関係者

①指導医の役割とは

指導医の役割

院長 是永大輔


 2004年にスタートした卒後臨床研修制度は、地方の医師不足を背景にしたGeneralistの育成を主眼とするものであるため、将来、基礎医学を志す若者が減ることが懸念されています。質の高い研修医を輩出しなければ、地域医療の充実や医学研究の発展は期待できず、医学・医療の衰退を招くことは必定です。
 これまで研修医を観察していると、(1)将来の診療科は決めていないが、いろいろなことを吸収したい積極的なタイプ、(2)すでに進路を決めていて、それ以外の分野にはあまり興味を示さない消極的なタイプ、(3)確たる目標はなく、できるだけ楽な科を探したいというモチベーションの低いタイプという3つのパターンがあるように思います。新制度下の研修医には、一定の収入と勤務時間、休日が保障されており、整った施設で充実したプログラムを研修できる権利があるわけですが、逆に言うと “習うことが当然”の土壌で育っており、よほど高い問題意識とモチベーションを持っていなければ、短い診療科ローテート期間内で多彩な研修内容を消化できないのではないかと心配です。彼等が、将来、独りよがりの医療に陥らないためには、自己の位置づけを検証できる“scientific mind”を育む教育環境が不可欠です。感受性豊かな初期研修の時期に、日常診療の場で、「何故?」と問う素朴な探究心、「なるほど」とうなずく素直な心、「それなら」と行動する実践力を育んでいくことは、指導医の重要な責務ではないでしょうか?

 知識や技術を磨くだけでは平凡な医師に終わります。今後の医療に求められるのは全人的な医療の観点に立ち科学的な見識をもつ臨床医です。私も50歳半ばになり、外科医としての先も見えはじめたこの時期、これからの自分の役割は若い医師のやる気を上手に育てることであり、彼等に“scientific mind”を培いながら、資質を理解して、進むべき道を間違わせないよう後押しすることだと思っています。

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