中津市立中津市民病院医療関係者へ初期臨床研修⑨研修医の声に耳を傾ける

医療関係者

⑨研修医の声に耳を傾ける

研修医の声に耳を傾ける

院長 是永大輔


 最近、「子供が医学部に入っているが、卒後研修を受けるとき、どのようにして自分にあった医療機関を選んだらよいでしょうか?」と知人からよく尋ねられます。私自身、自分の専門分野を離れてしまえば、今流行の“病院ランキング”や“よい病院選び”などを参考にしなければ、「どの医療機関が研修病院として優れているか?」と品定めをする眼力など持ち合わせていません。特別なツテのない人にはなおさらのことだと思います。

 研修医にとって良い病院の条件とは何でしょうか?一般的に考えてみると、特色ある研修内容、指導体制の充実、修了後の進路設定など幾つかが挙げられます。
具体的には、

  • (1)プライマリー・ケアを習得できる
  • (2)ある程度の症例数を経験できる
  • (3)指導医が教育熱心である
  • (4)教育レクチャーが充実している
  • (5)相当額の給料がある
  • (6)将来の身分が保証されている
等々であり、これらの条件を満たしている病院はおおむね人気が高いようです。 しかし、卒後臨床研修の質を論じるには、Science(知識)、Arts(技術)、Humanity(人間性)の三本柱が不可欠です。必要条件を兼ね備えた研修先が幾つかに絞られた場合、やはり最終的な決め手となるのは、本人の価値観とフィーリングではないでしょうか?
 私事にわたり恐縮ですが、私は卒業後に九大第2外科に入局しました。外科は忙しくて厳しいという評判でしたが、良くも悪くも私を常に一番引きつけたのは 人でした。尊敬できる先輩や魅力的な先生がたくさんいて、後輩の面倒をよく見てくれるところで働きたいと思いました。実際に、研修医が病院見学をして魅力的に感じる病院とは、雰囲気が明るく、職員が楽しそうに仕事をしていて、医師相互やコメディカルとの連携がよく、患者様への接遇もよく、目標とすべき指導医がいて、将来を語りあえる研修医仲間もいるところではないでしょうか?そして、彼等が求める理想的な指導医とは、誠実で、明るく、社会的常識があり、 医学的知識が豊富で勉強熱心、指導力を兼ね備えていて、気易く、そして輝くような表情で語りかけてくれる等々であり、こんな指導医のいる病院ならば、どのような研修医であっても自分自身を磨いていかなくてはならないと思うに違いありません。
 若い研修医諸君の一般病院に寄せる期待を考えると、学生時代に得た病院情報と実際に研修を受けた感想にギャップがあってはならず、一般病院で指導に携わるわれわれは常に自己改革が必要です。
「全ては真摯に研修医の声に耳を傾けることから始まる」
そう肝に銘じている今日この頃です。

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