市長コラム~つなぐ~ 旬とは

公開日 2021年04月07日

 鶯の声響く耶馬渓の山中は、自然の食の宝庫。竹林を歩きながら、芽吹き寸前の「筍」を探します。地表に視線を凝らし、地中にかくれた「筍」の頭を見つけ出す、素人には難しい作業。そこは山主の目と手、いや足裏を借りて地下の宝物を探し当て掘り出すのです。その場で切って生でも食べられます。また水辺に育つ「セリ」、似かよった草もあり、こちらも田主があぜ道の水路に入り本物を見分け引き抜いてくれます。ともに地元の指南役に感謝です。  
 収穫物を持ち帰ってから楽しみ倍増。おこした炭の上に「筍」を皮ごと置きます。皮は真っ黒く焦げますが、中味は香り高く柔らかでエグ味もありません。特製岩塩を入れたオリーブオイルをかけ口に運ぶと何とも言えないおいしさが広がります。「セリ」はゆがいて豆腐の白あえとそのままセリ鍋、ともに絶品です。加えて道筋で見つけた「土筆」、袴を取って味噌汁に入れるか、油揚げと一緒に醤油で甘辛く炊く、「蕗」も佃煮風に煮込む、何とも春の香りあふれる食卓となります。
 少し季節が下がると今度は「タラの芽」、「蕨」、「ゼンマイ」が登場、自然の野山が春の本格的到来を告げます。自然の食の豊かさは、都会では味わえない地方の醍醐味ですね。
 最近は実生活で「旬」を体感するのが難しくなりました。昔は、田植えが終わった頃から独特の香りを放つトマト畑で遊んだり、大人の真似をしてスイカを2本の指で軽くはじき、物知り顔に収穫時を見分けました。その時々の香り、音、色合い、空気が、季節感とともに脳の中にしみこんでいる気がします。
 時代は変わり、栽培技術の進歩で季節を問わなくなりましたが、何といっても食物は「旬」が一番。自然が生み出す力に感謝しながら、「いただきます!」。

春になり芽を出した筍

(市報なかつ令和3年4月15日号掲載)

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