市長コラム~つなぐ~ 中津を愛した版画家

公開日 2022年09月12日

 中津市役所の一階ロビーに壁画があります。中津の祇園祭をいきいきと色彩豊かに描いた作品「中津夏祭」、作者は武田由平、中津で活躍した版画家です。
 武田は、飛騨高山の生まれ、昭和4年、大分県立中津中学校(現中津南高校)の美術教師として赴任、教鞭をとり、草花や風景など多くの作品を制作、昭和35年、棟方志功らとともに日本版画会を設立。教え子も多く、後進を育て、大分の美術界に大きな功績を残し、平成元年96歳で他界しました。
 武田には面白い逸話があります。初の授業で、いきなり黒板に右手で文字、左手で絵をかき、時に左右同時に使い、生徒たちをびっくりさせました。さっそく付いたニックネームが「ガニ先生」、名物教師になったそうです。また、やさしく真面目で熱心、教え子の信頼厚く、昭和25年、日展入選時、上京費用に窮した武田を、教え子たちが全校あげて助成したと言います。
 指導を受けた版画家の花崎宏志さんからお聞きしたお話です。学校では、後に洋画家となる中山忠彦さんらと、イーゼル(画架)を傾け、黙々と絵を描きました。ある時、武田は、「徒歩で絵を描きながら東京まで行ったり、日本の雄大な風景を見てまわったりしたが、やはり大分が一番いい」と語ったそうです。
 9月17日から10月31日まで、「生誕130年 武田由平展―創作版画わが人生―」を、中津市木村記念美術館で開催します。また、市民の皆様が愛蔵している武田作品も多く、官民協力し、「アートで中津をつなぐ合同展」も、市内5か所で開かれます。
 中津の風土や景色をこよなく愛し、教え子や地域の人々に愛された武田由平。共に時を過ごした人が数少なくなった今、市民の皆様に、もっと知っていただきたい芸術家です。是非ご覧ください。

中津を愛した版画家
武田由平「中津夏祭」1958年

(市報なかつ令和4年9月15日号掲載)

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