公開日 2025年11月19日
今年度前半のNHKの朝ドラ『あんぱん』は、「やなせたかし」さんがモデルでした。幼児の誰もが大好きなアンパンマンの作者、50年を超える人気作品に託した思いは何でしょうか。
5歳で父親を亡くし、叔父夫妻のもとで青春時代を過ごしたやなせさん。高校卒業後、東京に出てデザインを学びます。戦争で中国に渡り、復員後は漫画家を目指すもなかなか芽が出ず、様々な職歴を経て50歳を過ぎて漫画家として大ヒットしたのがアンパンマンです。亡くなる94歳まで活動しました。
著書『何のために生まれてきたの?』を読むと本人の考え方がよくわかります。やなせさんによると、物語でも歌でも子ども向けとか大人向けとか区別しない。そうすると不思議なことに、内容が難しくても幼児は話のホントの部分がなぜかわかってしまうと言うのです。『アンパンマンのマーチ』の中に「なんのために生まれて なにをして生きるのか」と言う歌詞があります。こんな哲学的な永遠の命題を子どもは何の苦もなく歌っている。この歌を子どもの頃から歌っていると考えることが自然に身に付くような気がすると言っています。
また、アンパンマンの世界にはやなせさんが考える正義が込められています。正義の原点は、ひもじい人を助けること、そこで自らの顔(あんぱん)を人に食べさせたり、悪役であるバイキンマンを始め多くの愛嬌あるキャラクターを登場させ、この世のあり様を子どもたちに面白く伝えるのです。
余談ですが、やなせさんは『手のひらを太陽に』の作詞者。「生きているからかなしいんだ・・・生きているからうれしいんだ」と人生の悲喜交々がこの順番で歌われます。
アンパンマンの世界は、やなせさんから未来の大人への真摯なメッセージなのでしょう。実に奥深いですね。
(市報なかつ令和7年12月号掲載)




